構造材に使う柱や梁が割れているのですが大丈夫?
「構造材に使う柱や梁に割れがあるんですが、これって大丈夫なんですか!?」
という質問もよくお客さんから聞かれます。
建築中や新築のお家でにこのような割れを発見してしまうと、とても不安になってしまいますよね?
このような割れはなぜ発生してしまうのか、また割れがあっても、建築物としての安全上の問題はないのでしょうか。
今回はこの疑問に関して解説していくので、お家の柱に割れを見つけてしまった方、これから木の家を建てたいと思っている方、ぜひ参考にしてください!
目次
無垢の柱や梁の表面が割れているのですが大丈夫なんですか?
建築中や、新築で柱や梁に割れが入っていたら正直驚きますよね?
しかも、新築で引っ越してきたばかりのころは、「ミシっ」やら「パキっ」やらと木が割れるような音がすることもあります。
「おいおいこの家大丈夫かいな・・・。ミシっが、ミシミシミシになって、いずれ家がつぶれるんちゃうか?」
と不安になるかもしれません。
しかし結論からいうと、心配には及びません!
柱や梁に割れがあっても、強度に影響はないんです♪
では、なぜ「割れ」が生じるのでしょうか?
木材の割れはなぜ起きる??
木は、空気中の水分を吸ったり吐いたりするのをご存知ですか?
この呼吸により、木の細胞が膨張・収縮をするんです。
そして、この自然乾燥によって起こる割れを「干割れ」と呼びます。
木材を天然乾燥させると伐採してからじっくりと水分を抜いていくわけですが、これは建材として使われた後も続く現象。
だから、新築の家に住んでいると「ミシっ」とか「パキっ」とかいう音がするんです。
心霊現象ではないということがわかってホッとしました?
そしてこの干割れは、構造材に用いられるものである「芯持ち(木の中心をもつもの)」のほうが、板材よりも度合が大きくなる傾向にあります。
芯持ちのほうが、厚みがあるので割れやすいんです。
板材は厚みがないので、反ることはあっても割れることはあまりありません。
(絶対に割れないわけではないですが)
ただし芯持ち材も、貫通している割れであれば話は別ですが、表面のみ割れる「干割れ」で強度が下がるということはありません。
むしろ、割れているということは、乾燥して水分が抜けているということ。
そして水分が抜けているということは、細胞がぎゅうーっと締まっているということなんです。
ギュッと締まっている分、干割れのある木材のほうが、ない物に比べて強度が増す、というデータもあるくらいです!
集成材の柱や梁の場合割れないの?
集成材とは簡単に言えば切り分けた木材を乾燥させ、その木材を接着剤でくっつけて大きな木材とするもの。
写真の集成材も、継ぎ目がうっすらと見て取れますよね。
そしてこの集成材の場合は、基本的に「割れ」は生じません。
乾燥した木材同士をくっつけているので、それ以上乾燥して割れることがほとんどないんですね。
しかし私は過去の経験から、集成材を使うとシロアリが発生する可能性が高く、シロアリに食い荒らされた集成材の芯はスカスカになってしまったりするため、個人的にはあまりオススメはしません。
Q&Aでそのことについて書いているのでぜひ読んでみてください。
写真を見ると、ぞっとします…。
集成材を否定するわけではないのですが、あまり使いたくないと思う気持ちもわかっていただけるかと…。
構造材の材種によって割れたりする?
では、割れが発生しやすい材種、しにくい材種はあるのでしょうか。
http://www.nararinshi.pref.nara.jp/anzen.anshin/06-qanda.pdf
こちらの文献によると、アカマツは表面割れが生じやすい材種のようです。
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/rsdayo/18265018001.pdf
また、こちらの文献にも、針葉樹は表面割れが起きやすいと書いています。
やはり材種によって多少割れの発生のしやすさ、しにくさはあるようですね。
ただし、上記の材種も、割れが起きにくくする乾燥方法を用いることで、最小限の割れにとどめることはできるようです。
天然乾燥か機械乾燥かによってもかわる???
木材を乾燥させる方法として、「天然乾燥」と「機械乾燥(人工乾燥)」があります。
約半年をかけて徐々に乾燥させていく天然乾燥に対し、高温下で1週間~2週間ほどで人工的に乾燥させるのが機械乾燥です。
どちらにもメリット、デメリットがありますが、「割れ」に関してだけ言うと、「干割れ」が起きやすいのは天然乾燥です。
ただし、先ほども言いましたが、「干割れがある=欠陥木材」というわけではないのでご安心を。
ちなみに、機械乾燥で起きやすい「割れ」は、「内部割れ」。
それでは次のセクションで「内部割れ」について少しお話します。
ちょっと余談:機械乾燥する際の温度による強度の変化は?
ここで少し余談ですが、機械乾燥をする際、高温乾燥、中温乾燥、低温乾燥があります。
そのうちの中温~高温乾燥での温度の変化による強度の違いを実験した文献をみつけたのでご紹介したいと思います。
その実験によると、90℃と120℃、さらに135℃で乾燥された木材に対し、梁などの強さ指標となる曲げ強さおよび、柱などの強さ指標になる縦圧縮強さを測りました。
結果、どの温度で乾燥しても「曲げ強さ」に変化はなかったのですが・・・
「縦圧縮強さ」に関しては、温度があがる程低くなる傾向にある、との結果でした。
また、せん断強さに関しても、温度が上がる程低くなるということが明らかになった、とのことです。
この実験により、力の加え方により多少差はあるものの、おおむね乾燥温度が高いほうが、強度が低くなるということがわかったのです。
構造材の柱・梁の内部割れってなに?
内部割れとは、写真のように、木材の表面ではなく内部で発生する割れのこと。
これが起きやすいのが、機械乾燥、しかも高温乾燥をした場合です。
高温乾燥は、120℃以上の温度で一気に乾燥させる方法で、短時間で乾燥させることができるためコスト面でのメリットもあり、国内の多くのメーカーが行っている方法です。
しかし急激に乾燥させると、写真のような内部割れが起こる可能性も高く、表面が割れる干割れと違って内部割れが生じると、強度にも問題が起きるので良くありません。
やはり、私は理想の乾燥方法は天然乾燥か低温乾燥・中低温乾燥かな、と思います。
低温乾燥・中低温乾燥は、機械乾燥であることに変わりはないですが、木の養分(脂分や酵素)を保ったまま乾燥することができ、木材の香りを失うこともありません。
コスト面を考えると、もちろん高温乾燥よりは高くなってしまいますが、木の良さを活かし、内部割れを防ぐという点から機械乾燥をするとしても低温乾燥・中低温乾燥がいいですね。
構造材を柱・梁を割れないようにするためにはどうしたらいい?
干割れが危険ではないということはわかりました。
しかし、見栄えがいいとは言えませんし、割れていると何も知らない人が見ると不安になってしまう可能性は否めません。
それでは、割れないようにすることはできないのでしょうか?
木の割れを防ぐ方法として、いくつかあるのでご紹介します。
- 見えない部分み背割りを入れる
- 木の呼吸を止める
- 高温乾燥させる(表面の割れは防げるが内部割れが発生する可能性があるのであまりオススメできない)
背割りとは?
背割りとは、芯持ち材が乾燥する際に起きる割れを防ぐ、または最小限にとどめるために化粧面ではないところに直径の約2分の1ほどの深さまで人工的に「割り」を入れること。
こうすることによって化粧面や割れを見せたくない面に干割れが発生することを防ぎます。
また、乾燥を速くするという目的で入れることもあります。
あくまでも、芯持ち材にのみ有効、ということ。
それ以外の木材に背割りを入れる必要はありません。
また、梁の場合は基本背割れは基本的に入れません。
背割りを入れると強度は落ちる?
みなさんが一番気になるであろう、「背割りを入れると強度は落ちるか」ということについて。
これに関しては、背割りを入れないと干割れが起きる可能性が高く、さきほどもお伝えしたように干割れが発生しても強度には問題がないように、背割りを入れでも強度に大きな影響はありません!
木の呼吸を止める
木の呼吸を止めるとは、木材の表面にウレタン塗装などを施し、木と空気が触れるのを防ぐことによって割れが起きないようにすることです。
ただし、ウレタン塗料で塗装してしまうと、木の表面がピカピカと光沢のあるものとなってしまうので、木材本来の温かさを楽しみたい方には不向きかもしれません。
また、ウレタン塗装の耐性が持続するのは6~8年とされていて、決して長いとは言えません。
頻繁に塗りなおさなければならない点はデメリットといえますね。
構造材が割れても大丈夫?のまとめ
今回は干割れが発生する原因や、発生しても強度には問題ないという内容でした。
見た目的に構造材である柱や梁に割れがあると、ついつい不安になってしまうのが普通の人の反応だと思います。
しかし、いろいろな実験もされ、干割れがあっても強度に問題はないということは証明されています。
むしろ、干割れがあるほうが強度が増すとも言われています。
「木の風合いを活かした家を建てたい!」と思っている方はこのような木の特性や、干割れが起こっても強度には問題ないということを知っておくと、実際干割れを目にしたときに慌てずにすみますよね。
干割れを見つけても、びっくりせず、木が生きている証拠なんやな💖ととらえて楽しんでください♪
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