施主支給をするのってお得なの?
「施主支給」とは、新築やリフォームをする際にお施主様がご自身でキッチンやトイレ、タオルホルダーなどの備品を用意し、工務店に全ての備品を頼むより少しでもコストを抑えようとすること。
お施主様にとってメリットしかないように思えるこの施主支給ですが、実は工務店にとってもお施主様にとってもあまりおすすめできません。
今回はなぜ施主支給がおすすめできないのか、工務店側から、そしてお施主様側からの観点で解説していきたいと思います。
施主支給をご検討される前にぜひ一度お読みください!
目次
施主支給する人が増えている!?
施主支給は、ネットやホームセンターなどで備品を手軽に購入できるようになった近年増えてきており、実際成功された方もたくさんいらっしゃいますが、中には施主支給を「失敗」とおっしゃる方がいるのも事実。
事例が増えているからこそ、その問題点も明らかになってきているのが現状です。
それではまず、次のセクションで、「施主支給」のメリットをみていきましょう。
施主支給するメリットとは?
施主支給のメリットとしては主に次の2つが挙げられます。
- 施工会社・工務店が取り扱う備品以外に、自分の好みの備品や建材が選べる
- 自分で手配するからコストを抑えられる
施工会社や工務店に頼むとなると、それらが契約している会社からしか備品や設備・建材を選ぶしかありません。
しかし施主支給を選択すると、そのような縛りがないため会社やメーカーを問わず選ぶことができます。
施工会社・工務店が用意できるもののなかに自分好みのものがなかった場合は、選択範囲のひろがる施主支給はとても魅力的なものと感じてしまいますね。
また、施工会社・工務店を通して備品などを注文すると、どうしても手数料など余計なコストがかかってしまいます。
しかし自身で探し、自身で注文するのであればこの手数料というコストを抑えることができるのです。
よく施主支給されるもの
近年よく施主支給されるものには以下のようなものがあります。
- 照明器具
- 表札
- カーテン
- タオルホルダー
- キッチン
- トイレ
- 洗面台
などなど。
施主支給される設備や建材の種類は年々増えてきているように感じます。
これらの備品は、特にお施主様のデザインへ対してのこだわりが多い物が多く、施工会社・工務店が用意するもののなかに理想とするデザインのものがない場合があります。
妥協できるお施主様もいらっしゃいますが、やはりせっかく新築またはリフォームするならとことんこだわりたいとおっしゃるお施主様もいらっしゃいます。
僕もこだわりは少し強い?(笑)ほうなので、ご自身が納得のいくものを探したいという気持ちも痛いほどわかります。
しかし、施主支給にはお施主様側にも大きなリスクがあることを理解していただきたいのです。
次のセクションでは、そんなお施主様側のリスクについて解説します。
施主支給でお施主様側へのリスク
施主支給にはたくさんのメリットがあるように思えます。
しかしその反面、大きなデメリットもあるのです。
それはいったいどんなものなのか。
しっかりと確認していきましょう。
商品選択・発注のミス
これには、
- 細々とした付属品の手配漏れ
- 別々に購入したものの規格が合わない
- 大きすぎて素人では搬入できない
などがあります。
確認漏れやミスなどが主な原因ですが、床の強度に適していない重量のキッチンを注文してしまうなど、工務店が行えば起こりえないミスなどもあります。
こうなると、返品、発注しなおしや、床の強度を変えるなど余計な時間とコストがかかってしまう恐れが。
せっかくコストダウンのためにした施主支給が、裏目にでてしまいかねません。
また、配送サービスの確認ミスのために起こってしまうことに次のようなことも。
お施主様ご本人が頼んだキッチンが、運び込む人員がいない「車上渡し」であった場合・・・。
そのキッチンは道に放置されてしまうことになりますよね。
車上渡しは本当に困ります。
キッチンなど大きいものの場合は、受け取ったはいいものの1人や2人で運び込めるものではありません。
あらかじめ配送サービスについてしっかりと確認し、車上渡しである場合はお施主様のほうで運び込む人員を確保しておく必要があります。
実際に入ってた車上渡しの内容
受け取り時に起こりえる問題
前述した「車上渡し」も、この問題の1つといえますが、ほかには検品、保管に関してもリスクがあります。
荷受け時に検品し忘れ、施工が終了したあとにキズが見つかってしまっても、それが初めからついていたキズなのか、工務店が施工する時につけたキズなのか判断することができません。
この場合は保証が受けられない場合もあります。
同じ保証に関しての問題として、施主支給したもの保管している間にトラブルがあっても、工務店は責任を追わない場合が多いのです。
このように、保証に関してはお施主様がしっかりと管理・対応する必要があり、その労力もかなりのものになると思っておいたほうが良いでしょう。
工務店側から見る施主支給
さて、ではここからは工務店側から見る施主支給について、特に問題点についてお話していこうと思います。
工務店側からの問題点をお伝えすると
「利益のために施主支給を勧めないんだ」と思われてしまう可能性もあります。
しかし、問題点はそれだけではありません。
お施主様にも知っておいていただきたい問題点ですので、ぜひ一度お読みいただければと思います。
施主支給の問題点
工務店側から見る施主支給の問題点としては以下のようなものがあります。
- 利益が減る
- 手間が増える
- 水回りの問題
それぞれ具体的にどのような問題なのがご説明します。
利益が減る
正直な話、施主支給をされると工務店側の利益は減ります。
これは隠しようのない事実です。
工務店は、施工費用および設備の費用から利益を得ます。
施工費用のうち、職人に支払った分の残り、そして設備費用のうち、仕入れ先に支払った分の残りが工務店の利益となるわけです。
しかし施主支給では、施工費用からの利益しか得られず、成り立たなくなってしまいます。
このため、工務店やリフォーム会社のなかには、施主支給の場合には別途費用が必要な会社もあります。
手間が増える
新築の場合でもリフォームの場合でも一応、計画された工期というものがあります。
しかし、施主支給されるものが予定通り到着しない、大きさが違ったなどのトラブルがあった場合、工務店は工期を変更したり、手間が増えてしまったりすることがあります。
工期の変更はその後の別の案件の工期にも影響しますし、手間が増えたからと言って別途費用を要求するわけにもいかず・・・
これは工務店側からすればかなり困ってしまう問題なんです。
水回りの問題
水回りは、「水が漏れないこと」が大前提。
しかし、施主支給されたものを使用して施工して水が漏れてしまった場合、それが施工の問題なのか、施主支給された備品の問題なのかの判断がわかりません。
責任の所在がはっきりしない場合、メンテナンスのために水道屋さんに来てもらわなければならず、もし備品に問題がある場合は、お施主様の負担となってしまうのです。
施主支給ではなくすべて工務店に頼むメリット
基本的に上でお伝えしたお施主様側の問題点も、工務店側の問題点も全てなくなるとお考えいただければと思います。
備品、設備のサイズや重さが合わないなんてことも起こらないですし、届いた設備などをお施主様が運び入れる必要もありません。
要するに、お施主様は照明やキッチン・カーテンなどデザインを決めていただいたあとは何もしていただく必要がないということ。
保管・管理・対応などの手間もいらないし、万が一不備があった際の責任の所在に関して頭を悩ませる必要もないのです。
工務店側も、工期にのっとって作業を進めることができ、水漏れがあった際も、施主支給されたものでなければ、単純に施工に問題があると判断することができます。
また、工務店が手配した設備や備品であれば、もし何か問題があってもお施主様は基本的には金銭的負担を追うことはありません。
しかし、施主支給して一見コストダウンしたようにみえても後々問題が出てきた場合、メンテナンスや修理の費用はすべてお施主様負担となり、長期的に見るとコストダウンにつながるとは言い難いのです。
施主支給のまとめ
近年増えてきている「施主支給」ですが、確かに「こだわる」という観点からすると魅力的にも感じます。
自分が納得いくまで探した、納得いくデザインのキッチンや照明器具。
ずっと住む家だから、納得いくものに囲まれて生活していきたいという気持ちは本当によくわかります。
しかし、施主支給には大きなリスクが伴うということを知っておいていただきたい。
工務店側も、単純に利益が少なくなるから嫌がっているというわけではないのです。
施主支給をすることによって、かえってコストがかかったり、労力が必要になる可能性が高く、お施主様のストレスとなってしまうことも多々あります。
せっかくの新築・リフォームへの楽しい時間も、苦痛の時間へ変わってしまっては悲しいですよね。
新築の打ち合わせの際に、施主支給を勧めない工務店があっても、それはなにも自分たちのことだけを考えて言っているわけではないということを覚えておいていただけると幸いです♪