版築壁ってどんな壁?どうやって作るの?
みなさん、「版築」ってご存じですか?
実はこの技法は、古くからの技法であり、セメントがない時代から続くもの。
地層のように段々と積み重なったような模様が特徴で、古代の中国では城壁や建物の基壇などさまざまな場所で使われていました。
誰もが知っているあの中国の「万里の長城」もこの技法で作らています。
そして奈良の「法隆寺」の築地塀や「大仏」の地盤もこの技法が使われていたのです。
今回はこの歴史ある技法、「版築」について詳しく解説していきます!
目次
版築との出会い
僕が「版築ってすごい!」と思ったきっかけが、左官職人の挾土秀平(はさどしゅうへい)さんの作品を雑誌でみたこと。
挾土秀平(はさどしゅうへい)さんは、大河ドラマ「真田丸」の題字を手がけた有名な左官で、個人宅だけでなくホテルロビーなどの壁塗りも行い、個展も開いたりしていて左官職人であるのと同時に「芸術家」とも呼べる存在。
土と向き合い、土の良さを活かした温かみのある壁。
そんな挾土秀平(はさどしゅうへい)さんのこだわり満載の版築を見て、僕も版築にとても興味が沸きました!
そもそも版築ってなに?
そもそも何て読むの?と思われた方もたくさんいらっしゃると思います。
この「版築」という漢字は「はんちく」と読みます。
読み方はこれで完璧ですね(笑)
この版築は、壁や塀などを作る際に古代から使われている施工方法で、土を建材(道具)を用いて型枠などに強く突き固め、土壁や建築の基礎部分を高く構築していくことをいいます。
(突き固めている様子)
版築には石灰をたくさん含んだ微粒子を使います。
そして一番適している黄土(砂漠などに堆積した岩粉)が広く堆積した黄河流域などで古代から使用され、発展してきた工法です。
日本は黄土が少なく、土と石と少量の石灰や稲藁などの凝固材を混ぜたものでできていますが、最近ではセメントを混ぜてコンクリートに近いものとなってきていることが多いようです。
版築壁の材料は?
版築の材料はとてもシンプルです。
「土、砂利、にがり、石灰」などで、セメントのない時代から使われていた伝統的な技法で、身近にある材料でできます。
化学製品を一切使用せず手間がかかるうえ、層を重ねることで重くなるため崩落の恐れがあることからこれらの材料のみで作る版築はあまり見られなくなってきています。
版築の材料の1つに「土」がありますが、土はどんな土でも良いわけではありません。
砂、砂利、粘土のバランスが大切で、突き固めるため粘土分が多く砂利が少ないと乾燥したとき収縮して割れてしまうので注意が必要です。
ですので配合の分量はとても難しいようです。
調べてみると、LIXILさんの「土・どろんこ館」という建物がありました。
版築壁や土間たたきなど、職人さんのたくさんの技が盛り込まれた建物になっているようです。
愛知県にあるようなので興味のある方は、ぜひ一度足を運んでみるのはいかがでしょうか!
https://www.livingculture.lixil/ilm/clayworks/
どうやって作るの?基礎は?
まずは版築する場所を決め、両側を板などの建材で囲み型枠を作ります。
次に、先ほどの囲んだ型枠の中に土を少しずつ流し入れます。
そして道具(たたき棒)を使って土を突き固めます。
何度もこの作業を繰り返し行い、最後に板の高さ(だいたい10cmから15cm位の厚さ)程まで突き固め、型枠を外したらこれで完成です。
版築の仕上げ
版築壁の作り方は、まずは層の線を決めます。
上から枠の中に土を入れ層を重ねていきます。
道具(たたき棒)を使って土を突き固め、乾いたら上へ上へと進めていきます。
つくとこんな感じ♪
土の色を変えてまた突く♪
何層にも分けで重ねていきます。
一番上までできたら、雨がかからないように養生。
結構、時間も手間もかかっているんですよ~!!
塗り版築
本来の版築は一段一段突き固めて仕上げるため、手間と時間がかかります。
土の層が魅力的な味わいのある仕上がりは素敵ですが、コストもかなりかかる技法です。
そのため、現在はコテで塗って版築の特徴である土の層を作り出す「塗り版築」という方法も公安されているそうです。
塗る厚みは10mmから15mm程で、本来版築では施工が難しい場所や、広い面積などにも施工が可能でさまざまな色や模様をつけることもできます。
そして何より手間と材料が本来の版築よりも手軽にすむというメリットもあります。
そして強度と耐久性にも優れており、土の素朴な色合いや温かみなどを感じることができます。
材料も自然の素材であることからまた版築が再評価され、最近また注目を集めているようです。
従来の版築は、大量の土や砂利を使い重くなり、乾燥させるために日にちも必要でした。
なので現代では敬遠されがちでしたが、版築の表情を真似して作る「塗り版築」は本物に負けないくらい各社工夫を行っているため、従来の「版築」とはまた別の新しい仕上がりになっています。
ただ、実際これは僕は見たことがないので是非とも見て、施工もしてみたいな~♪
うちの事務所でも版築をつくってみました!
以前、弊社でも版築を作ったことがあります。
先ほどからチラチラと写真を載せてますが(笑)
材料を入れては突き固め、材料を入れては突き固めの繰り返し・・・。
確かに手間暇かかりますが、「何かが少しずつ出来上がっていく」という感覚はとても楽しかったです!
施工は毎度おなじみ、GREEN SPACEさん♪
その時の動画がこちら↓↓
また、弊社では版築の表面を少しだけ削ります。
こうすることによって表面が滑らかになり、凹凸の少ない版築になります。
これは個人の好みもあると思うので、「削らずそのままの風合いを残したい」というかたはそのままでもいいと思います。
削っている様子はこちら↓↓
版築とジョリパッド
版築で作ると何度も土を重ねるため、施工した場所が重たくなります。
そして費用や資材も大量に使い、プロに施工を頼むと高価になります。
アイカジョリパット 版築仕上
ジョリパッドを使用する施工では、モルタル壁の上にアクリル系の塗装剤を仕上げ材として使用するため、版築施工より重量は軽くなり、お値段も安価になり手間などを抑えることができます。
版築の材料である土と水にジョリパッドを入れ、攪拌し、それを壁に塗っていくのです。
表面の仕上げを変えることで、地層のように見える。
ただこれも見たことはなくアイカのHPで見ただけ・・・・
どこかで見てみたいな~
版築が用いられる場所
中国では、堤防、道路、家屋、寺院、墳墓などなど、あらゆる場所に使用されてきました。
日本でも、家屋の壁や墳墓、土塀、地盤として使用。
近年では、セメントを使用したり重量を軽くし、住宅の外壁や内装、マンションのエントランスの壁や、店舗のディスプレイや内装などいろいろな場所で使用されることがある様にあってきました。
その他にも、世界各国で版築が使われています。
ブータンでは農家の家屋に使われていたり。
その土地や気候にによって使われている場所や使い方が違うようです。
版築はDIYできる?
作業的には、枠を頑丈にしないといけなかったり、土を混ぜ押し固めるため体力と根気が必要です。
実際僕も自分でやってみて思ったのですが、とても手間も時間もかかります。
そして仕上がりも枠をバラしてみないとわからなかったり・・・
やはりプロと比べると仕上がりもうまくいかないと思います。
高度な仕上がりを求めるのであるならば、多少お金はかかりますがプロに任せた方がいいと思います。
版築壁のまとめ
古くから伝わり、セメントのない時代からの伝統的な中国の施工方法。
土に粘土や砂利などを混ぜ、土を型枠に流し込み専用の道具を使って突き固める方法です。
「万里の長城」や奈良の「法隆寺」の築地塀や「大仏」の地盤もこの版築の技法を使用しているようなので、ぜひ見学の際はそこにも注目してみると面白いかもしれません。
(法隆寺の築地塀)
材料は、土や石灰など大量の資材を使用します。
土を乾燥させる日にちや手間もかかり、重量も重くなることから倒壊の恐れがあるため、近代では敬遠されがちになっているようですが、化学製品を使用しない自然に優しい方法であることなどが注目され、セメントを使ったり現代風に材料もアレンジされ、マンションのエントランスの壁や、店舗の内装やディスプレイなど塀や外壁以外にも使用されるようになってきました。
昔の人の知恵がたくさんつまった版築技法。
今では、手間や材料などがかかり進んで行う人はいなくなってきているようですが、ぜひ検討中の方がいらっしゃいましたら自分流のオシャレなお家をデザインしてみてはいかがでしょうか?!
調べてみると、塀や住宅以外にもいろいろな場所で見られるようですので、お出かけした際は、周りをキョロキョロと見渡してみるのもいいかもしれません♪
弊社にお越しの際は、小さい版築の塀も見て下さいね♪