発泡ウレタン断熱は火災のときどうなる?藏家がグラスウールを選ぶ理由
最近壁や屋根に使う断熱材の事をよく聞かれるので、それについて書いてみようと思います。
以前書いたグラスウールの施工方法ブログはこちらから
あわせて、グラスウールの施工方法で変わる熱貫流率Uの話もどうぞ
初めてお逢いした方によく、
どんな断熱材を使われていますか?
厚みはどれぐらいですか?
気密は取れていますか?
など色々聞いてこられます。
目次
袋なしの高性能グラスウールを使用
前にも書きましたが、基本的に弊社では袋に入っていない裸のグラスウールを使っています。
その上に防湿シートを張ってます。
なぜ発泡ウレタンを吹かないのか?
そしてもう一つよく聞かれるのが、発泡系のウレタンを家全体に吹かないんですか?
これも聞かれるんですよね。
発泡ウレタンを吹くと、気密は簡単に取れてしかも施工も1日か2日で終わるのでかなり楽。
普及もしてるので金額もかなり安くなってきている。
これは使わない手はない!!って思いますよね。普通。
でも弊社では発泡系のウレタンは壁と天井全面には吹きません。
なぜか?
先日新住協の勉強会で、理事の会沢さんが出してくれてた写真です。

色々とウレタンの事についてお聞きしました。
そして、こちらは山形で落雷があった物件です。
壁全体的にウレタンの断熱材を張り付けていました。
火災でまず先に何で亡くなるかご存知ですか?
もちろん火に焼けて亡くなる可能性もありますが、それ以上に多いのがガスによる中毒・窒息です。
総務省消防庁の令和6年版 消防白書では、建物火災の死因で最も多いのが「一酸化炭素中毒・窒息」で36.5%。次いで火傷、となっています。
逃げようとした時に、煙とガスで先に意識をやられてしまう。だから、燃えた時に何のガスが出るのかは、ちゃんと知っておいたほうがいいと思っているんです。
先ほどの物件では、落雷でウレタンが燃えて有毒なガスが発生したと聞いています。
ただ、これは勉強会で伺った話で、僕自身が公式の調査報告を確認したわけではありません。1件の事例です。これをもって「ウレタンは危険」と断定するつもりもありません。
それでも、こういう事が実際に起こり得るという話を写真つきで聞いてしまった。それが弊社の判断に影響しているのは事実です。
続いてこちらは、イギリス・ロンドンで起きた高層マンション(グレンフェル・タワー)の火災です。2017年に72名の方が亡くなりました。
公式の事故調査では、主な延焼原因は外壁に張られたアルミ複合パネルで、その芯材のポリエチレンが燃え広がったこととされています。さらに外装パネルと断熱材の間にあった約50mmの通気層が煙突のようになって、火が外壁を一気に駆け上がった。断熱材もそこで燃えています。
つまり「断熱材だけが悪かった」という話ではありません。外装材・断熱材・通気層、この組み合わせが最悪だった事故です。
ただ、外壁の中に燃えるものを大量に仕込むと、条件が揃った時にこうなり得る。そこは覚えておいていいと思うんです。
発泡ウレタンの会社さんのHPに書いてる文章には
環境にやさしい、地球温暖化防止
ウレタン現場発泡断熱材「ノンフロン化」
環境負荷の高いフロンを一切含んでない完全ノンフロンシステムです。
発泡剤は化学反応により発生する炭酸ガスを利用しています
こんな感じで書いていることが多いと思います。
これはこれで本当のことで、地球環境という意味では大きな進歩だと思います。
ただ、ここに書かれているのは「作る時・使う時の環境負荷」の話であって、「燃えた時にどうなるか」の話ではないんですよね。
別々の論点なので、そこは分けて考える必要があると思っています。
シアン化水素が出るのは、ウレタンだけじゃない
ここも公平に書いておきます。
シアン化水素は、窒素を含むものが燃えると出るガスです。ウレタンだけの話ではありません。ソファやマットレスのクッション材、ナイロンのカーペット、ウールや絹、アクリル──家の中、けっこうあるんです。
しかも断熱材は石膏ボードの向こう側にあるので、部屋で火が出たら、まず燃えるのは家具と内装のほうです。
じゃあ何を気にしているのかというと、量です。
壁と天井、家じゅうをぐるっと覆う断熱材は、家の中で一番面積の大きい建材のひとつ。ソファ1台とはケタが違います。そこを何にするかは、一度決めたら建て替えまで変えられません。
鉄骨などで吹付けをしてなかったか?
たまに弊社でも発泡している物件を見られた方もおられると思いますが、あれは何を吹いてるの?と聞かれます。たまに吹かせてもらうのは、アイシネンというカナダで開発された断熱材です。
ここは正直にお伝えしておきます。アイシネンも、分類としてはウレタンフォームの仲間です。
ただ、いわゆる現場発泡の硬質ウレタンとは違って、水で発泡させる軟質タイプ。メーカーの説明では、炎をあてると表面が炭化して燃え広がりにくいとされています。
とはいえ不燃材ではありませんし、窒素を含む樹脂ですから、燃焼条件によってはシアン化水素が出ます。そこは他のウレタンと同じです。
だから弊社では「使わない」ではなく、使う場所を限るという考え方をしています。
※アイシネンは2019年にラポラ社と統合し、現在はハンツマン・ビルディング・ソリューションズが取り扱っています
しかし、これにもデメリットはあります。
下の写真は弊社が施工した物件なのですが、一部壁をめくらないといけなくなりめくったのですが。
これ、わかりますか?
アイシネンが、密着せずに浮いてたんです。
もちろんこの後、見に来てもらいきっちりと吹いてもらいましたが。
結局吹くって事は、中が見えないんですよね。
だから、今は吹いた後サーモカメラで全体的に確認するようにしています。
弊社では、リノベーションも多く施工しており例えば鉄骨造。
こんな物件だと、鉄骨の周りなどにグラスウールを施工するのはかなり難しくきれいに施工できないことが多いです。
そういった場合、このアイシネンを吹くと鉄骨の柱や梁に直接くっつくので断熱欠損が少なくなります。
藏家は戸建てでウレタン吹付けの断熱材は使わないのか?
基本的に、ウレタン断熱材はほとんど使っていません。
押出法ポリスチレンフォーム(スタイロフォームなど)は、基礎の内側に貼ったりすることもあります。
これは樹脂に窒素が含まれていないので、原理的にシアン化水素は発生しません。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、燃えれば一酸化炭素は出ます。しかも黒い煙とススがものすごい。「シアン化水素が出ない=安全」ではないんです。
有機系の断熱材は、どれも燃えれば一酸化炭素が出る。そこは大前提として押さえた上で、じゃあその上に何が乗っかるのか、という話だと思っています。
じゃあグラスウールなら安全なのか?
フェアじゃないので、こちらのデメリットも書いておきます。
グラスウールのガラス繊維そのものは燃えませんが、繊維をまとめている接着剤(バインダー)は樹脂なので燃えます。その上に張る防湿シートもポリエチレンなので燃えます。「グラスウールなら火事でも無傷」なんて話ではありません。
それに、グラスウールは施工の丁寧さがそのまま性能に出る断熱材です。隙間があれば断熱欠損になるし、防湿層をきちんと連続させないと壁の中で結露します。ラクな材料ではないんです。
それでも弊社が裸のグラスウール+防湿シートを選んでいるのは、燃えるものの絶対量を壁の中に持ち込みたくないから。そのぶん施工の手間は引き受けます、という選択です。
まとめ
藏家としては、家全体をウレタン断熱で覆ってしまうのはどうかなぁと思っています。
インターネットで調べてると、グラスウールがダメ。発泡ウレタンがダメ。
結構いろいろ書いてありますよね。
なお念のため。断熱材は室内側を石膏ボードなどで覆うのが建築基準法の前提です。ウレタン各社も難燃グレードで大臣認定を取っていて、法令上なんの問題もなく使える材料です。「ウレタンは危ない違法材料」みたいな話では全然ありません。そこは誤解のないように。
その上で、弊社は弊社の考えで選んでいる、というだけの話です。
まぁ、結局の所家は安全でなければなりません。
そこも含めてお客さんが納得できるところで選んでもらえたらいいのかなと思います。
ちょっと真面目なお話でした♪
※この記事は2018年に公開したものです。2026年9月、火災ガスに関する記述と出典を見直し、加筆修正しました。



















