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北関東の高断熱住宅の本について

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大阪市住吉区で居心地の良い家を、住まい手さんと一緒に楽しく作っています。
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新住協の会沢さんより、関東で売っているこの高断熱住宅の本の座談会の所を読んでみたらいいよと言われたので読んでみたら、本当にわかりやすかったので、文章にしてここに載せておきます♪

(もちろん、会沢さんの許可を得てUPしてます)

はじめに…知らないと大損するかも?住宅展示場にはない住宅

「北関東の高断熱住宅」が6号になりました。2014年1月に発刊して3年になります。これまで「高断熱住宅っていいですよ」(1号)から、「リフォームでする高断熱」(3号)、そして直近は「超省エネ住宅」(Q1.0住宅)」(4、5号)を特集してきました。


特集を組んであらためて思うのですが、高断熱住宅は今大きく進歩しています。たとえば北関東の夏と冬には、それなりに暑い寒いがありますが、「特別我慢するわけではないのに冷暖房の必要を感じないで暮らせる」という人がいたり、これはペットのいる家に多いのですが、「夏は全室冷房冬は24時間全室暖房で暮らしている」という人もいます。驚くことに、これらの家は年間の光熱費が13~15万円程度(水道代除く)で済んでいるのです。勿論、太陽光発電を搭載すると金銭的には光熱費ゼロです。(詳細5号)


冬は寒い夏は暑いと暮らしていた時代に24~25万円かかっていた光熱費が、快適な暮らしになったのに以前の半分近くになるなどと、ちょっと前なら考えられませんでした。省エネ住宅であればあるほど快適に暮らせることもわかりました。建築の当事者である私たち自身が驚くくらいです。
そういう家が宇都宮や小山をはじめ前橋や高崎、さいたまなど、今や関東一円で、私たちに言わせればごく普通に建てられるようになっています。言うまでもなく、これらはしっかりした断熱から生まれるのですが、今それが急速に普及しているのです。住宅はまさに大きな変貌期に入ったと言えます。
これらの事実を知って建てるのと、知らないで建てるのでは大違いだと思うのですが、多くのユーザーはそれを知りません。住宅展示場にはないからです。
「もっと知って欲しい!」、この「北関東の高断熱住宅」はそこから誕生しました。しかし、残念ながら、当初の予定通りこの6号で発行は一旦終了します。


そこで今回は、これからの家を新築したり増改築する人が本当にいい住宅を得るためのアドバイスを、「作る側のホンネ」として、工務店設計事務所に座談会形式で話して頂きました。


読者の皆さんにとっては家をつくる側、つまり業者の話ですから、”ホントなの?”と思う人もいるかも知れませんが、私たちのホンネのアドバイスとして受け止めて下さい。きっと役に立つはずです。

 

❷暖かい家だったはずなのに何かおかしい…

会沢:前段でお話しましたように、建てるなら絶対高断熱住宅をと自信を持ってお奨めしたいのですが、一方で高断熱住宅といいながらおかしな話もあります。今年の1月に埼玉に住む30代の方からメールが来ました。「一昨年暖かい家をということで家を建てたのですが寒いです。去年はこんなものかと思って過ごしましたが、絶対おかしいと思うのです。どなたかに家をみて頂けませんか?」というものでした(実はこういう相談増えています)。このメールを受けて、夢・建築工房(東松山市)の岸野さんに現地を訪問してもらいました。今日の座談会「つくる側からホンネのアドバイス」は、この話から入りたいと思います。岸野さん、どんな状況だったかお話して頂けますか。


岸野:場所は埼玉県の鴻巣で、建てて二年目の冬だそうです。「暖かい家ですよ」と聞いていたのに暖かくならなくて、一年目の冬は疑問に思いながらも「こんなものか」と我慢していたのでしたが、色々調べてゆく内に暖房費はかかるしその割に暖かくないので「やっぱりおかしい」と思い始めたそうです。図面を拝見し家の中をひとまわり見せてもらいました。断熱レベルは新省エネ基準を少し下回る程度で、外断熱の仕様でした。原因は換気設備だったのです。24時間専用の3種換気設備の他に、夏の熱気を排出しようとする排気ファンが屋根裏に1台設置してありました。両方ともフル稼働していたので、これはと思い、各部屋についている給気口に手を当てると案の定ビュービューと外の空気が入ってきているのです。これではいくら暖房しても暖かくなるはずがありません。夏用のファンを止めて、専用の換気設備も冬場は控えめにした方がいいとお話ししました。それからは連絡がないので改善されたのだと思います。


木幡:夏は開けて冬は閉めて下さいという換気口みたいなものですね。そういうのってお客さんできないですよね。天井の裏の方にあって見えないですし、毎年毎年開け閉めするのは無理です。その工務店はいいと思ってやったのでしょうが、そういう小細工、私はやらないようにしています。


柳田:仮にそれがなくとも断熱材が30ミリか50ミリでは断熱性能そのものが足りないと思います。断熱材の性能が多少良くとも…。


会沢:この本の5号に特集されている住宅に比べたら大変な違いです。


古澤:柳田さんらが建築した小山と宇都宮の家ですね。グラスウールの200ミリですよね。(本誌5号14P参照)


柳田:そういう住宅、私たちが建てている家と建築費はさほど変わらないと思います。お施主さんはまだ30代ということですよね。せっかく建てたのに、そんな話を聴くとお客さんがかわいそうになります。


岸野:吹抜けのある素敵な内観の家でした。でも、その雰囲気と訪問したときご主人が見せた「お金はかかっても暖かい家に直したい」という真剣な顔がすごく対照的で、印象に残っています。


木幡:性能はとりあえずソコソコで、そこに何だかわからないような機械設備を付けて「これいいですよ」みたいな売り方をする工務店、結構いますね。そういう人は自分が機械好きなんです(笑)


大熊:それだったら、断熱を厚くするとかサッシの性能を上げて、まず住宅本体の性能アップにお金をかけるべきだと思います。


古澤:でも、国の基準は満たしているんですよね(笑)


会沢:そうなんです。しかし、お客さんにしてみれば期待していたものと違うわけですから、基準は満たしていても問題です。


柳田:それを事前にわかって建てたならまだしも、そうじゃないんですからね。


岸野:このお客さんも、いい家を建てようと一生懸命高断熱住宅を勉強して、その住宅会社にたどり着いたはずなのに、結果はそうじゃなかった。同業者として何か残念な気がします。

 ー低断熱性能の住宅が横行している

会沢:井野さんは設計者の立場上、第三者として多くの現場に行っていると思いますが、現場に行って何か感じることありますか?


井野:私は、第三者として新築物件を見ることが多々あるのですが、断熱性能等級3(末尾※1参照 私たちは相当低いレベルと思っている)で施工しているのを見たりすると正直「すごくかわいそうだな」と思ってしまいます。せめて等級4で施工してあげてほしいというのが本音です。等級4だって充分とは言えませんから。


柳田:住宅会社によっては、値段通りに家づくりをするだけという会社もあるので、それも一因ですね。建てる方の「知識不足」が招くケースと言う人もいますがそれは違うと思います。工務店の良心の問題です。


井野:等級3であろうと、書面通りに出来ていれば検査そのものは問題ないんです。ただ、こちらとしては「もっと断熱できたんじゃないかな」と思う箇所はありますね。おかしな話かも知れませんが、どこかが無断熱でも他の場所が大きくクリアしていれば、全体としても基準をクリアしてしまうんです。たとえば「床断熱」の場合、玄関の断熱はしなくても基準は満たすので、玄関に断熱はしない。そうなると「玄関寒いな」っていう家ができちゃうんです。


会沢:等級2や3で「図面通りだから大丈夫」といっても、絶対的な性能が足りないのですから大丈夫じゃないんですけどね。


井野:浴室も無断熱が多いです。


新井:お風呂場なんかは、断熱材をいっぱい入れて欲しい箇所です。


古澤:お風呂の天井と床が繋がっているから高気密だ、なんて話す会社もありますからね。断熱のない高気密です。勘違いも甚だしいですよ。それだったらビニール一枚で包まれても同じじゃないですか。


新井:「魔法瓶浴槽ですよ」と言われて、それだけで断熱されていると思ってしまうのではないでしょうか。


井野:寒冷地仕様のユニットバスは、洗い場の床の下に断熱材を入れるか入れないかを選択できるんですが、埼玉県のあるショールームで話を聞いたら「入れたことはありません」と言われました。驚いてしまいました。


会沢:「国の基準を満たしています」は、かなり低いレベルの話ということですね。


柳田:本当にそう思います。私たちはどの程度やったらどうなるかを知っているので、基準通りだからいいなんて考えたことありません。お客さんが実際に生活してみて、喜ぶレベルの光熱費の少なさや「暑さ」「寒さ」は、基準値とは全く関係なく、大幅にかけ離れているんです。


新井:この本の1号から5号まで、私たちの施工した住宅の断熱材が載っていますからからその厚さを見て欲しいですね。一事が万事という言葉がありますが、玄関や浴室をそういう施工で済ます業者はその程度にしか性能を考えてないかも知れません(笑)


柳田:ハウスメーカーにやってもらっているということで「安心感」を覚えてしまう人もいると思いますが、私らは、大手メーカーと大差ない費用で、その何倍もの性能を出せます。

 

❸信頼できる住宅業者をどう選ぶか

―建てた家を冬に訪問させてもらう

会沢:そうなると、工務店の良心にかかる話になりますが、良心は見えませんからユーザーとしては「何を信用すればいいのか」という問題になります。皆さんはどう考えますか。


井野:やっぱりその工務店が建てた実際の家がどうなのかを確かめるのが大事だと思います。それには、「住んでいるオーナーさんにお話を聞かせてもらえますか」という問い合わせを業者にしてみるのもいいですね。


新井:私のお客さんの中に、断熱リフォームするまで3年かかった人がいます。その人は「夏涼しくて冬暖かい」が本当かどうかを確かめるために、OB客さんのお宅で、冬と夏を実際に体感しているうち3年経ってしまったのですが、他の業者では「見せて」と言ってもそこまで対応してくれなかったという話をしていました。業者の判別には一番間違いない方法です。


井野:OB宅などを「体験させてほしい」と言って承諾してくれる会社は、お客さんとの信頼関係もちゃんとしているということですからね。


古澤:私は契約する前にお客さんをそういう家に案内しますよ、冬に。そこでこんな暖かい家にしましょうと言います。お客さんニコニコしてくれます。


林:私も夏と冬の1シーズンを過ごしたOB客にお願いし、体感話をしていただいています。とても助かりますね。また、7~10年程経過した家の見学会を行うと、OB客自身が色々説明してくれる方もいらっしゃいますのでとても感謝しています。それから、断熱工事もタイミングが合えばご案内しています。


柳田:私のお客さんに、冬でもスリッパを履かない人がいるんですが、あるとき知り合いの新築住宅に招かれてその家に行ったら、床が冷たいので家の違いを初めて知ったと言っていました。その家を建てたのは、日本を代表する住宅メーカーですよ。高断熱住宅は、その会社が有名かどうかや会社の大きさで判断してはいけません。


山崎:施工技術も問題です。去年の話ですが、天井にシミが出たという住宅の原因調査を依頼され、行ってみると、屋根断熱の結露が原因でした。使っている断熱材や防湿シートなどは私たちと同じものですが、施工の仕方に欠陥がありました。こういうのも性能計算だけではわかりませんから、建てた住宅を見せてもらえたら一番間違いない方法です。


柳田:自分で建てた家の温度データを取っている会社なら間違いないんですけどね。いいから取れるんであって悪かったら取れないし、人にも見せられないから(笑)

―床暖房を奨める会社は…

新井:ちょっと視点は違いますが、私は、業者がどんなものを奨めるかで、ある程度、業者の考えを知ることができると思っています。その一つに床暖房があります。断熱がしっかりすると床暖房って全く不要で、合わないですよね。だから、極端な言い方をすると床暖房を奨める住宅会社の断熱性能はあまり良くないと思っています。


会沢:金沢市ですごい断熱性能の家を建てた方に、「どうしても床暖房をつけてほしい」という人がいたんです。実際につけて4年経ちますが、「結局一度も使っていない」って笑っていました。性能の良い家に床暖房は必要ないということですね。


一同:その通りです。


山崎:私は東京ですが、ある改修工事でリフォーム業者さんと競合、リフォーム屋さんは盛んに床暖房を奨めたのですが、私はそれに対抗して気流止め工法(末尾※2)と断熱強化を説明、結局私が受注したのですが、お客さんはトイレも寒くないと喜んでいます。床暖房だったらトイレまでしなかったと思います。価格は300万円でした。(本誌3号に関連記事掲載)


井野:「床暖房が絶対欲しい」という方は結構います。「東京だと床暖房なのに、こっちでつけないのはどうして」と言われたことがあります。そもそも断熱性能が違うため不要なのですが、なかなか理解していだだけないのも現実です。


新井:性能の良い家で床暖房をつけたら、苦しく感じると思います。


会沢:床暖房を奨めてくる会社は、断熱性能に無頓着、と言っているようなものですか。


柳田:床暖房を使っている人が床暖房は燃費が悪いなんて言ったりしていますが、それは床暖房が悪いんじゃなく、住宅の性能が悪いんです(笑)

―遮熱ペアガラスも…

新井:これは少し微妙な話かも知れませんが、私は「遮熱ガラス」(末尾※3)もそのひとつだと思っています。夏暑いからという理由だけで南面に遮熱ガラスを奨める工務店もありますが、関東は概して冬の日射が多いので、夏暑いからといって南面に遮熱ガラスを使うのは省エネの観点からも間違いです。そういう家は、冬は寒いという話をよく聞きます。それに夏の暑さ対策ってそういうものじゃないんですよね。


井野:単純に業者側が知らないだけ、というのもあるかもしれません。


柳田:「ガラスによって家の暖かみが違う」とか「ガラスは大きく二種類ある」とかをほとんどの人は知らないのだと思うんです。大手の住宅メーカーには、黙っていれば遮熱ガラスになってしまう会社もあります。これだと、冬せっかく入る日射を捨てているようなものです。使うならせいぜい東西の窓です。


会沢:この本の第2号に涼しいとか失敗したとか、夏対策の話が載っていますからあらためて読んで欲しいですね。「夏は南側が暑い」だから「暑い所には遮熱ガラス」ではあまりに短絡的すぎますが、そういう理屈を単純にふりかざすような会社にはしっかり話を聞かなければならないということですね。

―信用していいのはOB客の話

柳田:そんなことも含めて、やっぱり「OB客」を案内できる会社は良いと思います。実際、性能の話をされても一般人にはピンとこないことが多いですから、住んでいる人の話とかがやはり一番の証明だと思います。


新井:私も現場を見学させてくれる工務店はいいと思います。実際に見せながら「なぜこの構造なのか」というようなことを懇切丁寧に話してくれるところは信頼できると思います。


井野:タイミングよく構造などをお見せできるときは、「今しか見ることが出来ない」部分なので、仮にお客さんがその時には分からなくても全て説明するように心がけています。あとでその理由がわかると思うんです。


柳田:こちらでは当たり前にやっていることが多いですけど、実際見てもらうと「こんなに綺麗に断熱材が入っているのは見たことが無い」と驚かれることもあります。


新井:積極的にそういう場にお客さんを呼んで見せたいですね。


古澤:各営業さんの知識量を測る意味でも「燃費」や「Q値」を聞いてみて、どれだけ返答があるか、というのも試してみるのもいいかもしれませんね。「建築」を知らない営業上手な人も多いんだそうです。そういう人って営業成績がいいらしいですよ(笑)

―双方の信頼関係が大事

会沢:井野さんは一般の方に向けて何かアドバイスはありますでしょうか。


井野:信頼関係がすごく大事だと思います。工務店とは建てた後もお付き合いは続きますから、信頼関係を構築できるかどうかというのはポイントだと思います。結婚相手を決めるような感覚と言うか、きちっと頼む相手を見て欲しいと思います。


会沢:大熊さんはいかがでしょうか。


大熊:家づくりは、すぐに話が進んでいくようなものではないと思うので、担当の方とじっくり話してみて、「この人はウソをつかないな」とか自分に合った人を見つけるというのが、まず大前提だと思います。


林:引き渡し後も長いお付き合いをさせて頂くのですからお互いに信頼関係がないと上手くいきません。


柳田:お客さんと会社のウマが合うか合わないか、これはすごく大事です。合わなかったらやめる勇気も必要です。長年やってきて本当にそう思います。

 

❹一般の人が知らないすごい進歩…Q1.0住宅

会沢:日々、進化を続けるといっても過言ではない今の高断熱住宅ですが、どれだけ進んでいるかを知っているのは実際住んでいる人と当事者の私たちだけです。これから建てようとしている人がそれを知らない。知らないで建てるのと、知って建てるのでは大きな違いがあると思います。最近の様子と皆さんの所感を聞かせて下さい。


柳田:私はこの2~3年、新築はすべてQ1・0住宅(末尾※4)以上の住宅しか建てていません。その理由は、とにかくすごい省エネ住宅になるからです。小山や宇都宮、地元の真岡が中心ですが、年間の光熱費が15万円行かないんです。勿論、太陽光を載せなくて、です。光熱費が月1万円弱で過ごせるお家もあります。皆さんすごく喜んでくれています。建築時にでた多少のお金の損得勘定はなくなってしまうようです(笑)とにかくそんなレベルなんです。


会沢:光熱費全体が1万円台というのは本当に驚きですね。そのような住まいはやっぱりお客さんも驚くんですか。


柳田:ところが出来上がった家に対して「期待通りの結果になって良かった」という人もいるんですから勉強している人は勉強しているんですね(笑)。とにかく断熱性能を上げることを第一にやっています。


会沢:岸野さんは埼玉でどんなことになっていますか。


岸野:私のところでは、熊谷とか都市部の住宅街が多いので夏の室内環境も重視しています。基本的に窓を開けられないのでエアコン冷房で暮らすのですが、すごいことになっています。同じエリアに性能が違う住宅が4戸建っているのですが、夏場、クーラーの動き方が住宅性能によって全然違うのです。外気温が35度以上になっても室温が上がらないのでクーラーが作動しない住宅があったり、とにかく性能によってこんなに違うものかと、こちらが驚くくらいに断熱の威力を感じます。


会沢:井野さんの所は軽井沢という寒い地域だと思いますが、他の住まいとは結果の違いが顕著に表れてくるのでしょうか。


井野:冬場はやっぱり違ってきます。今年やった物件の中で、年末に氷点下15℃を記録するような所があったんですが室内は暖房器具無しで+2℃でした。それを見て、凍結の心配をしなくていい住まいができた、と思いました。引き渡し後、町内の知人の方から「暖房器具いっぱい貸しますよ」って言われたそうです。それぐらいその方のお宅は新築の頃から寒かったみたいなのですが、お客さんは引っ越し後から暖かく住めて「感動しました」という感想も頂くことが出来ました。


古澤:これは嬬恋ですが、寒い冬、暖房を切って朝起きてみると18℃もあったという家もあります。だいたい、どこの家も暖房を切っても最低16℃は残っていると言われます。


会沢:そういう住宅が軽井沢ではなく関東平野の真ん中で建てられるんですから違いは顕著ですよね(笑)。前橋や高崎ではどうですか。


大熊:今、初めて付加断熱で施工している最中です。光熱費を下げていく中で、性能面の追及は欠かせませんが、予算との兼ね合いもあるので、その辺の線引きを上手くやっていけるように模索しています。


林:私は前橋ですが東日本大震災の時、大停電になり、暖房器具が使えませんでした。この辺りも3月とはいえ冷え込みました。あるOB客は、同じ敷地内に住む息子夫婦の帰宅が遅い為、小さな孫たちが心配で石油ファンヒーターを持って行ったそうです。ところが、玄関を開けたら不思議に思うほど暖かく、ファンヒーターは不要だったという出来事がありました。息子さんの家は高断熱住宅だったのです。


会沢:親御さんの家は寒かったんですね。夢創ハウジングさんはいかがですか。


佐藤:今建てている家では5層ガラスを採用してやっています。


一同:(驚き)


井野:すごい性能ですが値段もいいですよね。


佐藤:関東では初みたいです。


会沢:その家の中でどれくらいの割合が5層ガラスですか。


佐藤:3分の1くらいの割合で採用させていただきました。トイレや洗面脱衣室、浴室、納戸など、狭い空間の部屋はドアを閉めてしまうとどうしても空気の流れが止まってしまうので、5枚ガラスを採用しました。


会沢:昔から家をつくってきている人が見れば、今の家はものすごく進化したと思う気がします。「こんなことが面白い」というのがあれば聞かせて下さい。


大熊:お客さんが言っていた話ですが、家に訪ねてきた人から「玄関の暖かさが違うね」と言われたことがあるらしいんです。その人も新築1年目に、入った時の玄関の暖かさの違いに驚いたと話していました。


井野:2月に内覧会を開催した時も、お客さんがドア開けた瞬間に「暖かい」と言っていました。あの瞬間、いいですよね。


大熊:それから、昔の家だと「寒いから戸を閉めて」っていうのをよく言っていたと思うんですけど、今の家は開けっ放しでも寒くないのでそういう場面がなくなりましたよね(
笑)


柳田:暖かさというのは単に温度の差だけでなくて、「質」も違います。


会沢:家に上がる時にスリッパを出してもらうことがありますけど、あれも実はいらないんですよね。


柳田:そうですね。床が冷たくないからスリッパを履きたくなくなるんです。


会沢:新井さんは何かエピソードありますか。


新井:「布団の枚数が減った」とか「衣服が変わった」とかいうのがよくあります。


会沢:冬物を片付けられるからスッキリした、というのもよく聞きますよね。押し入れの必要性も低くなります。


大熊:熱帯魚を飼っている方で、アパート時代は「電気代が高い」と嘆いていた人がいるんですけど、引っ越してからは半分くらいまで削減できたと聞きました。


古澤:神経痛が治った、という人もいますよ。


林:理由ははっきりわかりませんが腕などにできたアトピーが数ヶ月程で治った家族が何組もいます。結露やカビがなくなったからでしょうか。


岸野:東松山って結構寒くなるんですが、郵便配達さんのピンポ~ンに、お掃除最中の奥さん、短パンにTシャツで出たらしいのです。局員さんに「真冬のこの時期にこの格好?」って顔されたって笑っていました。


会沢:今までの生活では経験できないような体験も断熱性能が良いからですよね。ただ、あまりに良すぎて、ジャガイモの芽がすぐ出てしまうというのもありますけどね。


柳田:切り花もすぐにダメになってしまいますね。


会沢:シクラメンの花が早く咲き終わってしまうとかもですね。かわりにランはすごい花盛りになります。


柳田:影響を受けやすいジャガイモとかお餅とかは、断熱がないスペースを確保して保管すれば大丈夫ですよ。断熱しない食品庫です。


会沢:寒い地域では、冬に洗濯物を外に出せない分、中でよく乾くのも嬉しいですね。


新井:それはすごくいいんですが、一方で奥さんの化粧のノリが良くないと、冗談なのかクレームなのか、言われたりします(笑)。乾燥気味になるんですよね。


会沢:過乾燥対策も個々人で皆さん対策を打たれているみたいです。


新井:お風呂に乾燥機を設置する人がいますが、正直お金の無駄になってしまっていると思います。ちゃんとした高断熱住宅なら不要です。


会沢:浴槽自体が断熱されているものもありますが、家全体が暖まっていれば、それもいらないんですよね。


古澤:こんなエピソードもあります。井野さん(設計)と建てさせてもらった別荘の建築主さんが神奈川県に住んでいるんですけど、神奈川の家は寒くて電気毛布しているのに、軽井沢の別荘に来るとお風呂から上がっても全然寒くないって言うんです。「冬は軽井沢の方が快適」らしいです(笑)


井野:「こちらでは電気毛布使わないですよ」と言ったんですけど、なかなか実感されず、ご希望で電気毛布のコンセントを設置したんですが、やはりいらなかったようです。


古澤:建てる前は、あまり信用してもらえませんでしたけど、つくってから「やっぱりちゃんと聞いておいた方がよかった」と言われました。そういうのって結構あります。

 

❺価格の話

会沢:今までとりあげた高断熱住宅は、例えば30~40坪で考えた場合、どれくらいの価格になるのでしょうか。


柳田:坪単価というものにどこまでを含めるかという問題もありますけど、私はQ値1.0くらいで坪73万円くらいを想定しています。それに地盤改良とか入る場合がありますからプラス200万円、35坪くらいの家が多いので最終仕上がり2700万円~2800万円前後が多いですね。最初の段階である程度金額のことを話して、合意を得てから深い話をするようにしていますね。


大熊:私は坪65万円くらいです。若い人も多いので総額2400万円位で納められるように建築面積とかで調整できるよう、お客さんと相談しながら取り組んでいます。きちんとした性能にしようとするとこれ以上下げるのは難しくなってきます。中でも重視しているのはサッシと玄関です。例えばサッシなんかは「このレベルより下はダメ」というのを決めておかないと、性能が変わってきてしまうので、最初の段階で説明します。


古澤:私の場合は、既製品の建具はほぼ使わずに自分たちでつくります。断熱も200ミリ以上のものを入れるようにしています。ハウスメーカーではできないような部分をむしろ得意としています。また、暖房は温水パネルヒーターを設置しています。価格は、30坪で2000万円くらいからという感じですね。なるべく総二階のスタイルの形にしています。


新井:一番安価なもので50万円です。安価なものというのは内装がクロスであったり、建具なども既製品を使用してということになりますが、断熱性能は確保しています。設備などの選び方に配慮しています。ただ、全体の8割ぐらいの人は高性能志向になっています。今、見積りしている家は平屋の40坪で坪単価が約70万円の物件なのですが、そこは225ミリの断熱を入れてU値で0.3という数値を出すような高性能です。


山崎:住宅密集地で仕事することが多いのですが、建物本体以外に結構費用がかかってしまいます。そういう経費も含んで全体費用を見ないといけません。


会沢:岸野さんの会社では断熱性能レベルによって価格を4段階設定しているんですよね。


岸野:ええ、そうです。A~Dまでの4段階ですが、一番低いDが省エネ基準では最高ランクの等級4です。そこからサッシやガラス、断熱の厚みなどを上げていってAランクは壁200ミリ断熱、Q1.0住宅でも高ランクです。AとDの金額差は200万円くらいになります。AとDでの金額では暮らしてみて何が違うか、そんな説明もしています(4号の特集記事に掲載)


会沢:総金額にするとどうなりますか。


岸野:25坪くらいの家もありますのでそういう住宅は2300万円、坪90万円を超えることになりますが、全体としては仕上がり2500万円前後の家が多くなっています。今忙しくて、待ってもらっているのですが、面白いことに、最初Dランクでいいやと話していたお客さんも実際打合わせに入る頃には、Aランクにしたいと変わる人がいます。高性能志向が強くなっていると思います。


会沢:壁は付加断熱200ミリですか。ランク別の提示はわかりやすくていいですね。夢創ハウジングさんはいかがですか。


佐藤:先ほどの5層ガラスのところは坪75万円くらいです。普段であれば47~53万円ですね。床と壁が120ミリ、天井が140ミリの断熱を入れたものがそれくらいで出来上がります。


会沢:井野さんは設計を担当する立場として、デザインや性能面でお客さんとどういったお話をされるのですか。


井野:デザインで言えば、なるべくシンプルにして流行り廃りに影響されない住まいにしようと考えています。あとは何世代にも渡って住み継げる居心地のいい空間づくりも大切にしていますね。そのために良い無垢材や自然素材を惜しみなく使います。費用としては85~90万円くらいかかりますけど100年後も見据えた住まいにしているので、例えば30年で建替えになるような家と比べた時に単価は
これだけ違いますよ、と話もします。


会沢:そういう時お客さんはどういう反応をされるんですか。


井野:話をした上で合わない人は、本当にそれっきりになりますし、興味を抱いてくれる人はどんどん話が進んでいって契約までという形ですね。


会沢:例えば今から建てようとしている人に対して、「価格はこういうふうに考えた方がいい」というものがありますか。


井野:「安かろう悪かろう」というのは確かにあると思います。「安いから良い」という考え方をするのではなくて、根拠をしっかりと確認するべきですよね。設計の立場で工務店に見積もり依頼をしますからよく分かるのですが、坪単価は会社によって内訳がバラバラです。実際「ハコだけ」というのもあります。私たちはすべて含めて「これ以上追加はないですよ」という状態の下で金額を提示していますね。なので、坪単価で話をするよりは総単価で話をするようにしています。その中で「設計費はこれ」「工事費はこれ」と内容を明確にしています。


新井:高断熱住宅には換気と冷暖房の設備が不可欠ですから、あれは別これは別という金額の出し方は不親切です。


会沢:なるほど、総仕上がりで総額いくらという進め方がいいということですね。林さんはいかがですか。


林:今年の4月に引き渡した付加断熱ゼロエネ住宅(32.6坪)は約2350万円、坪当り約72万円くらいです。U値は0・34でした。仕上げを自然素材からクロスや既製品設備等を変更すると約55万円でもさせて頂いています。

 

❻工法と断熱材について

会沢:ちょっと前までは「○○工法がいい」とか、「外断熱が一番」とか言われた時代がありました。最近でこそあまり聞かれなくなりましたが一時はブームみたいになりました。当事者として皆さんどう考えますか?


新井:あれは断熱材メーカーの販売戦略みたいな要素がありました。何にでもそのはしりには色々あると思っています。最近聞かれなくなったのは、皆さんどんなものかがわかったからだと思います。


柳田:私自身、あるメーカーの工法(フランチャイズの高断熱住宅)で自宅を建てて今現在も住んでいます。20年くらい前、高断熱住宅が出始めの頃です。性能は簡単に出るのでそれ自身悪いものでもありませんが、価格面ではお客さんには奨められません。今なら自分でできます。何々工法ですという売り出し方をしている工務店は、高断熱住宅の全体を知らない人なのではないかと思います。


岸野:結局、性能は数字がすべてだと思います。空気が循環するとか湿度を調整するとかいろんなことを言いますが、性能を計算してみればいいと思うのです。数値が悪くて性能がいい住宅なんてありませんから。新住協のQPEX(末尾※5)を使えば公平に比較できますよね。


柳田:ある性能にするのであれば、断熱材はそれなりの厚みが絶対必要というのが本当のところだと思います。たとえば「これはグラスウールの倍以上の性能ですよ」と言ったって厚みが30ミリとか50ミリじゃグラスウールの100ミリと何も変わらないんですから、値段が高いだけでお客さんには何も意味ありません。


岸野:冒頭で話したクレームの話も、夏は換気扇をこうする、冬はこうするとかいうのは、断熱の性能とは関係ないんです。そんなの信じないで断熱の性能を信じるべきです。換気扇が付いていることさえお客さんが知らないんですから、工務店の勝手な思い込みとしか言いようがありません。


会沢:性能をちゃんと「計算する」ということですね。


岸野:そう思います。

ー燃えやすく、燃えたら危険な断熱材が急速に普及している

会沢:次は断熱材の話です。皆さんは主にグラスウールを採用していますが、業界ではウレタンの発砲断熱材が急激に普及してきています。ウレタンですから燃えますし、燃えたらすごい黒煙が出るので万一火災になったら大変なことが予想されます。皆さんは、どう考えますか。


新井:家は「安全」と「安心」を買っているわけですから、火事に対する危険性があれば説明しなければいけません。断熱材には「燃えにくいもの」、「燃えたら有毒ガスが出るもの、出ないもの」、それに性能とコストを照らし合わせてお客さんに説明が必要です。


井野:お客さんには全部伝えて欲しいんですね。グラスウールにもウレタンにも、メリット・デメリットは当然ありますから全部話した上で奨めればいいんです。悪い話で言えば、私のお客さんの中に「何が何でもウレタンがいい」という話をされた住宅会社があったそうで、質問をしても他の断熱材のことは答えてもくれなかったそうです。


大熊:会社で推しているものに対しては社員としては言えないというのはあります(笑)


古澤:私は疑問に思うのですが、そういった選択がそもそも「お客さんが望んでやっている」のでしょうか。私には使う理由がないんですけどね。


新井:ウレタンの吹き付け工法などは自分のために採用している会社もあるようですよ。施工を外注できるから。お客さんには色々説明するのでしょうが、お客さんは何かあったときは危ないなんて考えませんからね。


会沢:最近の気象は、落雷による火災も見逃せません。今年の夏はNHKのニュースでも落雷による火災発生が特集されていました。(※2017/8/23の21時)


新井:落雷があれば、瞬時に溶けてしまいますからね。安全のことをきちんと考えながら、断熱材の特性を理解して使用していくべきです。ロンドンの高層マンションで大参事になった火災も断熱材が原因です。ああいう断熱材が一般の家に大量に使われているんですから、私はまずいと思います。

 

❼200ミリ断熱

会沢:壁に100ミリの断熱材が入るようになってせいぜい10年です。しかも、効果のほどはきわめて疑わしい入れ方で、全体としてはいまだに正しく入っているとはいえない現状です。皆さん方はそれをとうに超えて、今は壁の外にも断熱材を張って合計「200ミリ断熱」を実行しています。その辺の話を聞かせて下さい。


新井:3年くらい前から取り組みを始めたのですが、今は全体の80%は200ミリ断熱です。会社が奨めるというよりお客さんが希望してくれます。


岸野:ウチもそうです。お客さんに模型を見せるのですが、それを見るとほとんどの人が厚い断熱に傾きます。


柳田:私は年間の新築戸数も多くないので全棟200ミリ以上の断熱にしています。省エネや快適性からいってお客さんにいいことは間違いないんです。光熱費も旧住宅の半分で暮らせます。


大熊:私は今やっているのが初めての工事ですが、現場では思っていた以上にスムーズに進んでいるのでこれから増えそうです。


会沢:実際、これから増えると思いますか?


古澤:間違いなく増えるでしょう。やっていてそう思います。


木幡:私らのように暖かいところ(つくば)でもできあがった家は全然違います。若い人はみんな厚い断熱を選びますよ。(4号参照)


会沢:東北・北海道を追い越す勢いで200ミリ断熱が普及しそうですね(笑)

 

❽冬暖かく暮らす部分リフォーム

会沢:次はリフォームの話です。リフォームといっても水回り機器の取り替えとか単なる壁の貼り替えではなく、断熱性能改善を伴う工事、一般にはリノベーションとか言われているものです。本誌の3号にも特集として事例が載っていますが、今、どんな状況ですか。


新井:
最近の傾向として、生活空間を区切って家の中のそこだけ改修という形で何件か施工しました。費用は大体1000万円です。高齢者二人が住むケースが多いのですが、水回りの設備機器などを新しくし、特に冬の生活ゾーンを決め、そこだけ暖かく暮らせるようにするのです。


会沢:大きな家の中に生活ゾーンを決めて、暮らしやすいように改修したということですね。


新井:改修箇所としては、リビング、キッチン、風呂、洗面室、トイレ、寝室です。お年寄りに必要な「暮らしやすさと暖かさ」の2つが同時にできるのでお奨めしています。


栁田:私も大体1000万円がひとつの目安だと思っています。部分を限らせてもらえば新築同等の暖かさも充分できます。


古澤:私が最近した工事は70坪くらいの家で、二世帯住宅に改修したのですが、家の二階部分を娘さんご夫婦の住居スペースにして、玄関を二つにして、断熱リフォームをしました。ツララが全然できなくなったと聞いています。断熱性能改善の証明です(笑)


栁田:どうすれば家が暖かくなるか、そういう知識と技術が無ければできない仕事ですから、町のリフォーム屋さんには難しいことだと思います。


古澤:断熱も耐震も壁の中をいじるのですから、壁だけ張り替えるなんて本当は勿体ないんですよね。そのとき、断熱工事や耐震工事をすれば一番効率いいわけですからね。


大熊:まったくその通りです。


会沢:アライさんのところでは、一棟分まるまる改修というのも数多く手掛けていますよね。新築か改築か、迷うこともあると思うのですが、そのあたりはどうですか。


新井:一棟まるまるという場合には、改修にするか、新築にするか、は迷うところだと思います。今までの経験から言うと改修は新築より2割は安くできると思います。


会沢:例えば2000万円くらいの家だと400~500万円新築よりも安いということですね。


新井:改修の内容としては断熱も耐震も行います。耐震に関しては、診断をして現行の耐震基準以上の性能にします。断熱材では200ミリを扱うことが多いです。ですから、断熱性能も一般の新築以上に改善されます。


栁田:全面改修するような家は元々がしっかりした住宅ですね。


新井:そうですね、これは本当の話なんですが、リフォームを選択する方の中には、親から「いい木を使ってつくられたんだよ」と言われてきた人が多いんですよ。


栁田:昔は、いい木を使うというのはひとつのステータスでしたからね。リフォームでさらに長生きさせていけるのは大きいです。


新井:どの家でも改修できるかどうかは事前に調査診断します。


会沢:大手メーカーはリフォームではなく「壊して建て替えた方がいい」なんて簡単に言いますけど、そうじゃないということですね。性能が上がって金額の差が500万もあるのであれば「リフォームで」という気になりますね。井野さん古澤さんらはリフォームの状況はどうでしょうか。


井野:この前調べましたら、仕事の約半分はリフォームでした。皆さん、限られた予算でリフォームの相談に来ることが多いですし、「1000万円以下で」という話もよくあります。そうなるとリビング、寝室、水回りなどを中心にやっていく感じです。何ケ所か集中して「ここをしっかりやろう」というやり方の方が幸せになれるんじゃないかなと思います。


新井:人が家の中で長居する場所、裸になるところ、脱衣場やお風呂、トイレなんかは重点的にして欲しい部分です。


井野:たとえばゲストルームみたいに「何回使うだろう」というような場所を重点的にやってもしょうがないですからね。


木幡:私の場合は、少しのニュアンスが違うのですが、高齢の方が「この先何年生きるかわからないけれども少しでも楽に暮らしたいので」というような相談が増えています。そういうとき必ず、できるだけの断熱をして暖かくなるようにしているのですが、すごく喜ばれています。


林:私は古民家の大改修を年1~2棟行っています。ほとんどの古民家は寒く・暗く・使いづらい家ですが、改修後はマイルドな暖かさになって、使いやすく快適になっていますよ。古民家の改修は断熱が絶対必要ですね。

 

ー補助金の話

会沢:優良リフォームには国の補助が出ていますね。


新井:今年は長期優良住宅化リフォームに対する補助金が厚くて、300万円の補助金が出るんです。長期優良住宅の既存住宅の認定を取らないといけないこと、断熱性能に優れていること、三世代であることというような条件は必要になりますが、活用していますよ。


会沢:補助金は上手に使いたいですけど、タイミングが合うか合わないかが大きく関わってきます。


新井:お客さんの中には、補助金の期間が過ぎてしまった場合「どうしても補助金の申請を受けたいので」と一年間待ってもらうこともあります。待てるのであれば、補助金が出るまで待つのがベストです。「補助金が出たので建てましょう」とお客さんに伝えられる関係ができるといいですね。


会沢:実際には、補助金の存在を知らずに建てている方もいるということですが、リフォームでは最大どれくらいの補助金が出るのでしょうか。


新井:色々なケースがありますが、例えば今施工している所では県産材の補助金で70万円、ZEHの補助金で165万円、それから浄化槽の入れ替えリフォームに市から50万円補助金が出るということもあって合計では約300万円になりました。


会沢:最大とはいえ、300万円は大きいですね。工事費の20~30%を賄えてしまうほどですから、やっぱり上手に使っていくべきです。


林:市町村の補助金も上手く利用するといいですね。市町村によっては空き家を手に入れ、二世代近居で改修する場合、条件にもよりますが夫婦、子供二人で150万円、県産材の内装で最大20万円、合計170万円の補助金が利用できます。重複はできない補助もありますから注意が必要ですけどね。


大熊:補助金があることを全く知らないで違う所に行ってしまう人は正直、可哀想だなと思うんです。それを踏まえた上での依頼先というのも大事です。


会沢:補助金のことを「知っている業者」「知らない業者」に別れているということですね。


大熊:そうです。中には面倒くさがってやらない、なんていう会社もありますよ(笑)

 

ー手抜き工事も横行?

会沢:そういえば古澤さんは以前、手抜き工事の話をされていましたが…。


古澤:知り合いが依頼したある大手の会社の現場を見たときのことです。住みながらの施工なので端から順にやっていくんですが、そのような方法でいくと躯体の傷み具合が分からないはずなんです。建て替えできてしまうくらいの費用も掛けていると聞いていたので「これでいいはずはないんだけどなあ」と思いました。壊す際に、見せたくない部分はお施主さんがいない内に」隠してしまえ、というような話もあるようなんです。


栁田:これは私のところの大工さんの話です。リフォームである現場に手伝いに行ったら、「当然交換だろう」というような部分を、追加予算が出ないから「早く隠してしまえ」と言われて驚いたと話していました。そういうことがあるんですねぇ(笑)私たちは例え契約後であっても、「交換した方がいい」と判断したものは、お客様に話すように徹底しています。もちろん追加で予算を捻出してもらうことになりますから、難しい話ではありますが、でもそれがあるべき姿だと思います。

 

❾ネット社会の功罪

会沢:本誌4号に、ある若夫婦がネットから工務店を選んだ話が紹介されています。工務店のホームページから家づくりに入る人が大幅に増えているようですが、どうですか。


新井:ネットで探して来てくれる人はすごく増えています。皆さんある程度勉強してから来る人が多い気がします。


栁田:ウチもネットから来る人が大半になりましたが、昔はイロハのイから細かく説明していたのが、今では知識を持ってきてくれる分、一歩進んだ段階から話を出来るのですごく助かっています。


古澤:「断熱」などで検索して辿り着いた人たちばかりなんだと思います。だから皆さん断熱性能などの知識はお持ちですよ。すごくいいことだと思います。


岸野:それに会社のことをあらかじめ理解してからきてくれるので、すごく話しがしやすいですね。


栁田:家づくりにおいては、自分から積極的に調べて勉強する「熱意」を持った人が成功しているような気がします。


木幡:私はよく来れましたねと必ず褒めるんですよ(笑)。住宅展示場とかあちこちの営業攻勢をかいくぐって断熱住宅をつくる工務店にたどり着いたのですからラッキーですと一緒に喜ぶことにしています。お客さんも、言われて「そうか、よかったのか」と合点してくれます(笑)。そのかわりこちらも一生懸命いい家をつくりますよ。

 

ー過信は禁物、ブログや口コミ

会沢:情報が手に入りやすい時代になったことで、知識を持つ方も多くなりましたが、それがどこか偏っていたり、それを信じて融通が利かなかったり、というような話を聞くことがあります。お客さんに「それはあまり主張しない方が良いですよ」とか「それは誤解ですよ」と言いたい場面を経験したことはありますか?


井野:ネット社会になったことでブログとか口コミの内容を信じている人も多いです。中には過剰に全然違うことを主張する人もいて、そういう意見を覆すのは結構大変です。全部が悪いとは言いませんが、情報は慎重に見極めないといけないと感じました。


会沢:勉強は是非して欲しいけど、ネットには間違った情報もありますよ、ということですね。


新井:相当あると思っていいですね。

 

❿つくるならこんな家を

会沢:紙面も終わりになりましたので、「関東の高断熱住宅は、つくるならこんな家を」と皆さんが普段思っていることを聞かせていただけますか。


大熊:私はまだそんなことを言えるレベルではありませんが、「2階を快適にする」がいつも念頭にあります。2階で寝る人が多いですし、エアコンをつけなくても「暑い」と思って起きることが無いようにしたいと思っています。


栁田:私の地域は冬たまにマイナス7~8℃まで冷え込むことがあります。そういう時に暖房を消して寝ても明け方15℃以下にはならないような家にしたいと思ってやっています。それには壁の付加断熱は欠かせないと思っています。


木幡:去年のことですが、数寄屋風の和風住宅を建てたいと相談されました。その方は茨城はそんなに寒くないのだから断熱を無視していいと言うのです。どうしても必要ないと強く言うので依頼をお断りしました。高断熱住宅を知ったからには、もうそれ以外できません。断熱のいい加減な住宅は結局住まいとして短命だと思っています。


山崎:私は熱帯夜対策ですね。エアコンが快適に効く家。そのためにはしっかり断熱です。


会沢:寒い地域(軽井沢)ですと、どうでしょうか。


古澤:私は軽井沢周辺で仕事することが多いのですが、付加断熱をもっと厚くしたいと考えています。120+120の240ミリをしていますがもっと厚くです(笑)。厚い断熱は暖房にかかる費用も暮らしの環境も結果が断然違うんです。なので、厚い断熱は何をするにしてもすべての根幹だと思っています。厚い断熱をお奨めします。断熱はメンテナンスが要りませんから。


新井:「性能は何で表されるのか」を考えた時にたどり着くのは、「温度」だと思いますね。寒い朝、暖房なしで何℃になっていますか、暑い夏、温度のコントロールできていますか、と言いたいですね。真冬の朝、暖房なしでも18℃キープできるような家をつくって欲しいです。


井野:私は設計する立場として、高断熱住宅というのはもう当たり前の話として、あとはどれだけデザイン性をよくできるかを目指しています。居心地を考えて、夏も冬も、開口部を使って光や風、借景をどれだけ演出できるか、本当にそれを考えることが出来るのは高断熱住宅だと思います。


林:高断熱住宅にするのは勿論のことですが、引き渡し後、30年先の暮らしを考え、家族の変化にも対応できるプランを根底においています。


岸野:私は性能計算を是非お奨めします。性能を追求すると厚い断熱+開口部の高性能化につながります。そういう住宅を関東に建てると夏冬ともに快適ですごい省エネ住宅になります。


会沢:皆さんのお話を聞きながら思い浮かべていたことがあります。埼玉南部にQ1.0住宅を建てた夫婦の家を訪問したときのことです。「この家の見た目は隣近所の新築住宅と何も変わらないのに、冬になるとまるで様相を異にする。寒くならないので暖房の要らない日が多くなり光熱費は以前の半分以下、特別な機械を設備しているわけじゃないのに、なぜ?と不思議な気がする。心も身体も楽だ。」そんなことを話してくれたのです。今日の話に出てきた家はまさしくそういう家だと思いました。質実剛健という言葉があります。「飾り気がなく、まじめで、強くて、たくましいこと」と辞書に書かれています。見えない部分にすごい断熱をしたからといってそれを贅沢だとは誰も言いません。読者の皆さんには、断熱がぎっしり詰まった質実剛健の家をつくっていただくことを願ってこの座談会を終了します。

※1:国交省の定める断熱性能には等級2~4がある。等級4が現在の次世代省エネ基準で最高ランク
※2:壁上下の端部をふさぐことで、壁内の気流を止めると、既存の断熱材が性能を発揮する。(P28参照)
※3:日射を透過しにくい機能を持ったペアガラス。
※4:新住協の高度省エネ型高断熱住宅。次世代省エネ基準レベルで建てたと仮定した住宅と比較して、暖房エネルギーを1/2~1/4まで削減する。
※5:新住協が開発した住宅の断熱性能や冷暖房エネルギー消費量を計算するプログラム。省エネ設計が目的。新住協会員は全員が計算する。

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大阪市住吉区で居心地の良い家を、住まい手さんと一緒に楽しく作っています。
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